歯の豆知識Tooth Knowledge

2018.03.27在宅支援歯科診療講演会に参加しました。

こんにちは。八戸、十和田から車で20分 笑顔と思いやりの溢れる歯科医院 五戸 松尾歯科の院長、松尾紘吾です。

 2018年2月10日、青森県歯科医師会館にて日本大学歯学部摂食機能療法学講座教授の植田耕一郎先生をお迎えして研修会が開催されました。超高齢社会である現代のニーズに非常に沿ったテーマであり、研修会当日はDRのみでなくスタッフも多く参加し、会場は多くの参加者でいっぱいとなり、非常に充実した時間を過ごせましたのでご紹介致します。

 リハビリテーションとは第一の医学(治療の医学)、第二の医学(予防の医学)に続く第三の医学(障害の医学)であり、治らないという側面を認識し、関わりを積み重ねる医学であると講師の先生がおっしゃっていました。例えば、麻痺の障害のある方の麻痺は治すことが出来ませんが、麻痺という障害を受け入れ、その上でその方の生活の質を向上させるべく関わりを続けて行く事が大切であるそうです。
そして、リハビリテーション医学の理念としては
① 機能障害(麻痺)→治療的・訓練的アプローチ
?活動制限(能力低下)→経管栄養、姿勢や食物性状の工夫といった代償的アプローチ
③ 参加制約(社会的不利)→介護力の導入、社会的資源、物的改善といった環境改善アプローチ
④ 心理障害→心理的支援
の4つがあり、この4つの理念をしっかりと理解する事が正しい在宅支援には必要です。

介護予防・生活支援サービス事業対象者への基本チェックリストの中で口腔機能の向上に関する問診項目は全25問中3つあり
① 「半年前に比べて固い物が食べにくくなりましたか?」→咀嚼機能評価
?「お茶や汁等でむせる事ことがありますか?」→嚥下機能評価
② 「口の渇きが気になりますか?」→肺炎リスク評価
があります。

我々が自分の診療室にて診察している患者さんにこのような症状があれば、その患者さんは今後口腔機能の低下が表れ、要介護状態になる可能性が出てきます。その為、日々の診療の中で上記3つの質問を問診表に入れる事をお勧めしていました。
実際に上記の3つの質問にチェックの入った方に対しては摂食機能評価法を行っているそうです。診療室で可能な摂食機能評価には
① オーラルディアドコキネシス
?反復唾液嚥下テスト
③ ブローイング
があります。
① のオーラルディアドコキネシスとは、椅子に座っている患者さんが10秒間に何回「パ」や「ラ」を発音できるかを測定する事で口唇や舌の動きを測定し、咀嚼機能を評価する検査です。
?の反復唾液嚥下テストは30秒間に何回唾液を嚥下できるかを測定し、3回以上嚥下できなければ喉の機能が衰えている事を疑うテストである。女性の場合はわかり辛い時は喉に触れて検査を行います。
③のブローイングはコップに水を入れてストローで泡立ててもらい、その持続時間を測定する検査で、口腔・咽喉頭を含めた全体の評価です。

次に機能訓練には
① 頬・舌・口の体操
?ガーゼを巻いた電動歯ブラシにて首・肩・咽頭・顎下部・頬骨弓・口輪筋等に1分間ずつ当てるマッサージ(口腔内にも有効)(唾液分泌効果あり)
③舌圧子を10秒間ずつ舌に前から上から右から左から3クール程度当て、反発してもらう舌の筋力トレーニング
④ 頬の左右、前後、上下へのストレッチを各5秒ずつ、3セット程度行う表情筋のトレーニング等があります。むせやすい方への訓練にはユニットに仰向けになってもらい、頭だけを上げてつま先を10秒見る訓練が有効です。休みながら3クール程行うと効果的であり、ポイントは喉仏を力むように意識させる事だそうです。

通いたくても通えない方への対応として、在宅支援があります。在宅支援では、ただの歯ブラシ1本で口腔ケアを行うという行為がとても尊い事です。まずは歯ブラシ1本だけでも持って在宅支援に伺い、口腔ケアを行う事が大切であると強くお話されていました。また、日々の口腔ケアにはしっかりとした連携が必要となります。なぜならば、口腔内を触るという事は歯科医療従事者の特異的な行為であり、その他の職種の方は口腔内を触る教育がされていないからです。例えば、口腔内を診るのにペンライト等の明かりが必要な事が分からないという事もあります。その為、日々の口腔ケアに関しても施設の方、多職種との連携・関わりが重要となります。

また、一度急性期で食形態が落ちると、食形態を戻すことによるリスクがある為なかなか食形態を戻すことが難しくなるそうです。そんな時、経口摂取を再開する基準として
・意識状態が覚醒し、本人の食べたい意志がしっかりある事
・座位が保てる事
・唾液で口腔内が湿潤している事
・額にしわが寄せられる事があげられる事。
があげられます。

我々健常者でも大好きな食べ物が毎日3色、全てペースト食という状況が何年も続けば食欲不振になり、低栄養・活力不足に陥る可能性があるのではないでしょうか。
 
上の写真の献立を考えてみてください。
ごはん、みそ汁、ホウレンソウのお浸し、ポークソテー、ちくわの天ぷら、牛乳
この献立が写真の状態で出てきたら、、、、
生きるための栄養摂取ではありますが、楽しい、美味しい食事といえるでしょうか?

 今回の講演により、在宅支援を通じて患者さんの生活をより良くしていく事が今後の時代に求められているという事を強く痛感しました。
われわれがしっかりと介入する事で、誤嚥性肺炎を減少させ、一人でも多くの方においしい食事を食べて笑顔で過ごして頂けるように今後も頑張りたいと思います。
 

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